「土地所有制度からみる千葉一族前史①」千葉一族盛衰記第十八話【2024年11月号】

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  2024/10/29
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班田収授法から墾田永年私財法まで

これまで取り上げたのは桓武天皇、平高望、平良文、平将門、平忠常の五名です。この後、数代下ってようやく千葉を名乗る一流が生まれます。

千葉一族のご先祖様たる彼らの生き様を日本の土地所有制度の推移や税制を下敷きにしてみると、古代税制史を俯瞰することができます。また、千葉常胤の時代に隆盛を迎える千葉一族の土台がいかに形成されたのかが、立体的に理解できます。

そこで今回は、数回に分けて、土地所有制度の変遷と千葉一族前史の人物たち、という視点でもう一度「彼らの時代」を振り返ってみましょう。

桓武天皇と墾田永年私財法

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桓武天皇は、794年に都を長岡京から平安京に遷都した天皇です。彼が、いわゆる桓武平氏の祖であり、千葉一族の源流です。

桓武天皇が生まれる100年ほど前、いわゆる大化の改新がありました。大化の改新とは、ご案内のとおり乙巳の変(蘇我入鹿暗殺)というクーデターに端を発する一連の国政改革です。中大兄皇子と中臣鎌足が中心になって行ったこの大改革により、すべての土地は天皇のもの、とする「公地公民制」が始まったのです。

そのような思想のもと、まずは戸籍を作りました。戸籍が整うと、農民が天皇から土地を借りて作った農作物から「租」や「調」といった税金を納めてもらう、その農民が死んだら土地を天皇に返してもらう、という前提の「班田収授法(はんでんしゅうじゅのほう)」という法律を作り、納税制度が始まりました。

しかし、税金が重すぎて、まじめにすべてを納めていたらとてもじゃないけれど農民はやっていけない。そのため、田畑を捨てて逃げた農民たちが浮浪人となり、村々にあふれかえることになってしまいました。

そうなると、税収は少なくなるし、社会も不安定になってしまう。そんなわけで、桓武天皇がまだ子どもだった時代、聖武天皇によって「墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)」という法律ができました。

これは、細かい規定はいろいろありますが、簡単に言えば「自分で開拓した土地は自分のものになりますよ」とするもので、身分に応じて与えられる面積の上限値を設定しました。

これまで「国土のすべては天皇の土地」だったものが、「臣民による土地所有」を認めた法律の制定ですから、天皇からみたら激震が走る大改革です。朝廷内は大騒ぎだったことでしょう。そんな混乱を、おそらく「少年桓武くん」は肌で感じられるところで暮らしていたはずです。

桓武天皇として即位した後、彼は農民の負担を軽くするなどして律令制を立て直そうと努力した形跡がみられますが、時代の流れに抗うことができず、結果的に「私有土地」である荘園は爆発的に増えていくことになりました。

墾田永年私財法と平高望の先見の明

平高望は、桓武天皇の孫です。彼は、皇族という身分を捨てて、「平(たいら)」という姓を天皇から下げ渡された、いわゆる賜姓皇族でした。

彼が皇族の身分を捨ててまで欲した役職は、上総介(かずさのすけ)でした。上総、つまり千葉県の約半分にあたるエリアの統治権を、身分と引き換えに獲得したわけです。

彼のような地方長官は、都に居ながら地方の役人に任せて、税金の上前をはねる「遥任」と呼ばれる統治手法が主流でした。しかし高望ははるばる上総に赴任して、根を下ろしました。

高望が、上総介の任期を超えてもなお上総に留まり続け、息子たちとともに統治に精を出したのは、一族の繁栄のための土地を手に入れるためだった、と考えられます。この時、高望とその子どもたちが、墾田永年私財法を前提に獲得した領地こそ、後の千葉一族の繁栄の基盤となったのです。
【著者プロフィール】
歴史噺家 けやき家こもん

昭和46年佐倉市生まれ。郷土史や伝説をわかりやすく、楽しく伝える目的で、落語調で歴史を語る「歴史噺家」として活動。著書に「佐倉市域の歴史と伝説」がある。
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千葉市内を中心に配布しているフリーペーパー「稲毛新聞」は、地元のニュースを取り上げ読者にお届けしています。平成8年に創刊、おかげさまで202...
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