中高年女性に増加傾向の肺MAC症とは?【稲毛新聞2025年4月号】

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  2025/4/3
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 市内在住の60代女性から「肺がん健診がきっかけで肺MAC症であることがわかった。自覚症状がなかったので検診の大切さが身に染みた」というメールが弊社に届いた。
 
 その女性によると、千葉市の肺がん検診で異常が見つかり、CT検査(コンピュータ断層撮影)を受けた結果、肺MAC症と診断されたとのこと。肺MAC症は結核に似た菌による病症だが、人から人へ感染がみられないので通常の社会生活は続けているそうだ。
 
 中高年女性に増加傾向の肺疾患である肺MAC症は、身の回りに潜んでいる菌に感染したことで発症する。あまり知られていない疾患であるが、驚くことに近年における罹患者は結核よりも多いという。肺MAC症とは、どのような病気なのだろうか? また効果的な予防方法はあるのだろうか?

発症後2年半で死亡した高齢女性

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 市内在住の50代男性は、一昨年、母親が肺MAC症で亡くなったと話した。母親は80歳のとき咳が続き体重も減少したため受診。レントゲンと痰検査の結果、最初は間質性肺炎だと診断された。当時の病状はかなり進行していたため、飲み薬で治療を始めたものの、体重は減少する一方だった。咳が治まらず強い咳が原因の圧迫骨折で入院も。 その後の再検査で肺MAC症と診断され、吸入薬での治療を続けたが、発症から2年半で亡くなったという。

「母は肺がん検診を5年前から受けていなかった。毎年受けていれば早く病気が見つかったのかもしれない」と男性は後悔の念に駆られている。男性はそれまでがん検診を受けていなかったが、母親の死をきっかけに毎年検診を受けるようになった。

肺NTM症の9割が肺MAC症

 MACという種類の細菌に感染したことで呼吸器感染症を引き起こす肺MAC症。その原因になるのは、どのような菌だろうか?
 
 詳細を調べてみると「抗酸菌」と呼ばれる細菌からハンセン病の原因となる「らい菌」と、結核の原因となる「結核菌」を除いた菌が、「非結核性抗酸菌(NTM)」と呼ばれるもの。そのNTMが引き起こす肺の疾患が「肺NTM症」であり、そのなかで9割を占めるのが肺MAC症だ。

結核を上回る肺NTM症の罹患者数

 肺MAC症を含む肺NTM症は、一般的にはまだまだ知られていない病名ではあるものの、近年、結核よりも罹患者が増えているという。
 
 厚生労働省が発表した2022年の結核患者数は、人口10万人あたり8・2人、前年は9・2人、2年連続で10人を下回ったことで、日本は世界保健機関(WHO)による「低まん延国」の水準を保っている。
 
 しかし、その一方で2014年全国調査における肺NTM症罹患率のデータによれば、肺NTM症罹患率は10万人あたり14・7人と肺結核を上回り、2007年と比べて罹患者数が約2・6倍に増加している。※出典=日本における肺非結核性抗酸菌症の全国調査「日本呼吸器学会の認定施設を対象に実施された全国調査」

肺MAC症の特徴

 やせ型で中高年女性の罹患者が多いというが、その理由は明らかになっていない。MACという菌は複数の菌で構成され水場や土の中など私たちの身近に潜在している。浴室や手洗い場などの水場や、庭、畑などでも感染する。
 
 都内在住の人よりも地方で農林業に従事している人のほうが肺MAC症の罹患率が高く、ステロイド薬や抗がん剤など、免疫力を低下させる薬を服用している場合も感染しやすいと言われている。
 
 知らないうちに感染し、胸部レントゲンで発見されることが多く、感染してもすぐに特徴的な症状が出るわけではないため軽度なら経過観察になるという。
 
 進行が遅く気づきにくい病気だが、放置しておくと肺へのダメージがゆっくり進んでいく。病状は数年から十数年かけて徐々に進行するのが一般的と言われているなかで、急激に悪化し、咳や痰、血痰、倦怠感、発熱、寝汗、体重減少などが見られるケースも。
 
 過労など体の抵抗力が弱った際に症状が出ることもあるという。悪化が進めば肺機能が低下し呼吸不全となり酸素吸入器が必要になるだろう。
 
 現在は肺MAC症に対しての特効薬がなく、数年間という長い期間をかけて複数の薬剤を併用しながら治療効果を高めていくしかない。

肺MAC症の予防方法は?

 肺MAC症は感染が流行する季節はなく年間を通して感染リスクがあるため、日々の生活で予防することが大切だ。
 
 例えば、MAC菌が潜んでいるかもしれない手洗い場、風呂場、キッチンなどの水場は常に清潔にしておくこと。水場の掃除の際にはマスク着用を心がけたい。シャワーヘッドや美顔器、サウナなどはミスト状の水蒸気を吸い込むので機材は洗浄が徹底されていることが好ましい。
 
 家庭菜園やガーデニングの際は土埃を吸い込まないようマスクを着用する。また、栄養のある食事をとり、定期的な運動や十分な睡眠で、体力をつけて免疫力を向上させ、規則正しい生活を送ることは他の疾患予防にもなる。もちろん定期的に人間ドックや検診を受けることは重要だろう。
 
 肺MAC症は結核と違い、人から人への感染がみられず隔離は不要のため、社会的な注目度は低く情報が十分に行き渡っていないように思える。
 
 しかし近年、肺MAC症の罹患者が増えていること、どこでも感染する可能性があることを知識として持っておけば、後に自分や家族の健康を守ることにもつながるだろう。長引く咳や血痰などが見られたら「コロナの後遺症かも」「風邪が長引いている」などと自分で判断せずに、早めに医療機関を受診することだ。
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